蜜色トライアングル【完】
木葉が言い募ると、馨はふふっと笑った。
余裕のある、大人の笑み。
小野寺はちょっと待っててというと、ポーチから一枚の紙を取り出した。
「……これは……?」
「私の連絡先よ。また都内で会いましょ?」
にっこり笑って小野寺は言う。
木葉は目を輝かせた。
「え!? いいんですか?」
「もちろんよ。今度、都内で食事でもどうかしら?」
「嬉しいですっ」
ここ数日どことなく暗かった木葉の顔が、ぱっと明るくなる。
馨は目を細め、眩しそうに木葉を見た。
「……やっぱかわいいわね、あなた」
「え?」
「何でもないわ。お兄さんにもよろしくね?」
「はいっ」
木葉は深々と一礼し、休憩室を出た。
その背を、馨が色を帯びた妖艶な瞳でじっと見つめていた……。