蜜色トライアングル【完】
五章
1.ペンションへ
17:00。
木葉は駐車場でジエンタのトランクを開け、武具の整理をしていた。
竹刀や短刀をまとめた後、宿泊用具が入った鞄を下ろす。
ふうと一息ついたところで、鞄から携帯を出して昼に受け取った冬青からのメールを確認した。
『ペンション・デルタロッジ 予約:2名 チェックイン:18時』
どうやら高原のペンションを予約してくれたらしい。
その文面は機械的でいつもの冬青のメールとは明らかに違う。
恐らく冬青は携帯からネットで予約し、確認メールをそのまま転送したのだろう。
メールの宿泊施設案内を見ると、ペンションの近くには三角形で有名な湿原があり、朝の散策がオススメらしい。
木葉はちらりと携帯の時計を見た。
そろそろ向かわないとチェックインの時間に間に合わない。
しかし冬青はまだ武術指導を続けているようだ。
木葉はしばし考えた後、自分の荷物を抱えてバス停へと歩き出した。
ジエンタは残しておかないと、兄の足がなくなってしまう。
と、その時。
曲がり角の向こうから、黒いCZ-Rが走ってくるのが見えた。
見覚えのあるあの車体は……。