蜜色トライアングル【完】
風呂から上がると、圭斗が談話室で雑誌を読んでいた。
いつもかけている銀縁の眼鏡はテーブルに置かれ、整髪料をつけていない髪はふわふわでエアコンの風にかすかに揺れている。
眼鏡をかけていない圭斗は、その目鼻立ちのバランスの良さが際立つ。
いつもは眼鏡の奥なのであまり気づかないが、睫毛もけっこう長い。
『顔のレベルで言ったら兄貴の方が上』と凛花が昔悔しそうに言っていたことを木葉は思い出した。
思わずじっと見つめていると、やがて圭斗が顔を上げた。
「木葉?」
言い、眼鏡をかける。
いつもの姿に戻った圭斗に、木葉は近寄った。
「お待たせ」
「あぁ……って木葉、ちゃんと髪乾かした?」
木葉は自分の頭に手をやった。
ドライヤーは女性二人に占拠され、残念ながら使うことができなかった。
女性たちは木葉が浴場から出た後も念入りに身支度していた。
「使えるドライヤーがなくて……」
「それじゃ風邪ひくぞ? 部屋にはあった?」
「……なかったと思う」