蜜色トライアングル【完】
3.弟は過保護?
「あれ、姉貴? ……また来たのかよ。一人?」
言いながら、木葉の後ろに立っていた圭斗に視線を移す。
その顔を一目見るなり、声音に険が混ざった。
「なんだ、ヤブ医者と一緒なのかよ」
「や、由弦。久しぶりだね」
にこりと笑った圭斗に、白皙の貌の男は刺すような視線を向ける。
木葉は苦笑いを浮かべて男を見た。
桐沢由弦。21歳。
木葉の弟で、隣町にある『南城工科大学』に通う大学四年生だ。
由弦は大学に入ってから花壱でバイトを始め、今はサブチーフのポジションを任されている。
木葉は入り口の扉を閉め、目の前に仁王立ちになった由弦を見上げた。
圭斗ほどではないが、由弦もそれなりに背が高い。
加えて、自分の弟とは思えない群を抜いた美貌。
花壱に客が増えた理由は蕎麦の味ももちろんだが、由弦の存在も一役買っていることは間違いない。