蜜色トライアングル【完】



冬青は馨の言葉に氷のように固まっていた。

同じだから――――何が同じなのか?

疑問を考えるより先に、馨に知られていたということが衝撃だった。


冬青はベッドで眠る木葉を見た。

木葉は気づいていないのではない。


――――忘れているだけだ。


そしてそれを、思い出したくないがために無意識のうちに封じている。


「木葉……」


木葉が思い出したくないのなら、思い出さないままでいい。

冬青は病室での父の言葉を思い出した。


『遅かれ早かれ、思い出すだろう。そうなったとき、お前はどうする?』


木葉が望むなら、今までと同じ立場に徹する。

想いを元の位置に押し込め、固く蓋をする。


――――木葉の傍にいるのならば、それ以外に選択肢はない。


冬青は静かに目を瞑った。



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