蜜色トライアングル【完】



「姉貴、仕事が終わったらどこにも寄らずにすぐに帰れってオレ言ったよな? この頃この辺物騒なんだよ。ましてやこんなヤブ医者連れて……」

「こんなヤブ医者でも、木葉のボディガードくらいはできるよ」

「黙れオマエには聞いてない」


由弦は胡散臭げに圭斗を見る。

由弦の口の悪さは昔からだが、圭斗に対しては特に当たりがキツい。

入り口で押し問答していた三人だが、周りの客の好奇の視線に由弦が奥へと誘導した。


「あと誰か来んの?」

「凛花ちゃんが後で来る予定」

「三人か……じゃあ奥の席でいいか。あっちに座って待ってろ」


由弦は奥のテーブルを指し示し、踵を返した。

木葉と圭斗は示されたテーブルに歩み寄り、上着を脱いで壁のハンガーに掛けた。

店はまだ開店して30分ほどしか経っていないが、すでに半分の席が埋まっている。

あと一時間もしないうちに満席になるだろう。


やがて5分ほどして、由弦が盆を持って戻ってきた。

盆の上にはお通しの小鉢と手拭きと箸、そしてビールと梅酒サワーが乗っている。

梅酒サワーを木葉の前に、ビールを圭斗の前に置き、小鉢や箸を手際よく並べていく。

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