蜜色トライアングル【完】



木葉が言うより早く、その影が声を発した。

木道を踏みしめる足音とともにゆっくりと木葉の方に近づいてくる。

茶色のクロップドパンツにサンダル、紺のパーカーという軽装だが、どことなく上品さが漂っている。


「圭ちゃん」


圭斗は木葉を見、笑顔を浮かべた。

爽やかな朝によく似合う、優しい笑顔。


「おはよう、木葉。散歩かい?」

「うん。圭ちゃんも?」

「ああ。朝霧で有名と聞いていたからね……しかしすごいな。こんなに霧深いところを散歩するのは、初めてだよ」


朝日が当たり、霧は次第に上空に溶けるように薄れてきている。

その光景はとても幻想的で、まるで雲の上にいるような気さえしてくる。


「そういえば、冬青は? 連絡あったかい?」

「うん……というか、今朝見たら長椅子で寝てた」


木葉が言うと、圭斗は目を丸くした。


「今朝? ……まさか、一緒の部屋だったの?」

「うん」


ダブルベッドの部屋だったとはさすがに言えない。

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