蜜色トライアングル【完】
木葉は首を傾げて圭斗を見た。
「まさか……」
「……?」
「……いや、なんでもない」
圭斗はすぐに笑顔を浮かべた。
そのまま着ていたパーカーを脱ぎ、木葉の肩にかける。
「その恰好では寒いだろう? これを着ているといいよ」
「え、いいよ。そんな寒くないし……」
「いいから。さ、袖を通して」
圭斗はいつになく強引にパーカーを着せようとする。
木葉は訳が分からないまま、パーカーに袖を通した。
ふわりと柑橘系の香りがする。
木葉が腕を通したところで、圭斗がすかさずファスナーを上まで上げる。
「……?」
「これでよし」
圭斗は何かに納得した様子で木葉の肩を軽く叩いた。
「今日は昼でも寒いみたいだから、それをずっと着てるといいよ」
「え、でも……」
「女の子は体冷やしちゃダメだからね。医者の言うことは素直に聞きなさい」
にこりと圭斗は笑う。
なんだか強引に押し切られた感じもするが……。
木葉は怪訝に思いつつも、圭斗に背を押され木道を歩き出した。