蜜色トライアングル【完】
<side.由弦>
GW最終日の夕方。
由弦は参考書が入った大きめのボディバッグを背負い、帰り道を歩いていた。
――――特別講義の帰り。
講堂を出、大学の門をくぐったところに遥が立っていた。
遥は当たり前のような顔で由弦の隣に立ち、腕をからめる。
「……」
付き合うといった覚えはないのだが、どうやら遥の中では既にそういう関係になっているらしい。
呼び方もいつのまにか『桐沢くん』ではなく『由弦』と呼び捨てになっている。
由弦の通う大学は工科大学で、女子生徒の数は消費税程度だ。
その中でも遥は容姿がトップクラスで、憧れる男子生徒も多い。
二人で腕を組んで歩いていると、刺すような視線があちこちから向けられる。
由弦としては迷惑以外の何物でもないが……。
しかし遥はそんな視線など全く気にする様子なく、由弦に話しかける。
「ねぇ、由弦。今日は夕飯どうする?」
特別講義の間中、二人は夕飯を共にしていた。
遥はそのまま朝までと誘うが、由弦はあの夜以来、彼女の誘いを断っていた。