蜜色トライアングル【完】



あの後。

朝を迎えた由弦の心に言いようのない空しさが込み上げた。

この空しさは、あの時と同じだ。


――――二年前。

大学に入り、初めて入ったサークルで、由弦はある女性と知り合った。

当時四年の彼女は彼氏とうまくいっておらず、相談相手に由弦を選んだ。

由弦の方はさほど乗り気でもなかったが、彼女の誘いである夜飲みに行き、そのまま関係を持った。

木葉と同年のその女性は、目元が木葉に少しだけ似ていた。

その後数回関係を持ったが、彼女は大学卒業とともに地方に戻り、昨年彼氏と結婚したと人づてに聞いた。


彼女を抱いた時も、由弦の心の中には木葉がいた。

そして行為の後、我に返り、空しくなる。

彼女にも悪いし、何より心の中の木葉を汚したようで、自己嫌悪に陥る。


「昨日は中華だったよね~。じゃあ今日は……うちで何か作る?」

「……いや。外食でいい」


由弦はそっけなく言い、繁華街の方へと歩き出した。

遥は料理に自信があるらしく、弁当もそうだが、ことあるごとに手料理を振舞いたがる。

しかし由弦は、遥の手料理を食べるくらいなら誰が作ったかわからない外食の料理を食べる方がマシだった。

――――外食の濃い味であれば、木葉の味と比べなくて済む。

栄養を取るだけのものと思えば口にすることができる。


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