蜜色トライアングル【完】


「あんたは何が食べたい?」

「……あんたじゃなくって、名前で呼んでくれると嬉しいんだけどな」

「……一之瀬、だっけ?」

「名前ぐらい憶えてよね……」


遥はぎゅっと由弦の腕を抱きしめる。

これまで遥はちやほやしてくれる男としか付き合ったことがなかった。

しかし由弦は正反対で、ちやほやどころか、自分に関心を持っているかどうかすら定かではない。

しかしそれが、遥の心を大きく動かした。

自分からアプローチするドキドキ感、そして充実感。

そして何より、由弦は大学の中でも群を抜いたルックスだ。

これまでの彼氏がイモか何かのように思えてしまう。


「で、何が食べたいんだ?」

「そうね……、蕎麦とかうどんとか、軽めのものがいいな」

「わかった」


短く由弦は言い、繁華街の外れの方へと歩き出す。

その横顔を見上げながら、遥は嬉しそうに微笑んだ。



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