蜜色トライアングル【完】
考え込みながら歩いていた由弦は、家の前で誰かが会話しているのに気付き、塀の角で思わず足を止めた。
街灯の灯りの下、木葉と圭斗が何やら話をしている。
「圭ちゃん、昨日今日と、いろいろありがとね」
「ああ。……あそこ、いいペンションだったな。また行こうな」
圭斗は木葉の頭をポンポンと叩いている。
その目は優しく、甘い。
由弦は二人の会話に目を剥いた。
塀の影にいるせいか、二人は由弦に気づいていない。
「あと、夕飯ありがとな。とても美味かったよ」
「あはは……そう言ってもらえると嬉しいよ。そういえば、これ」
木葉は手にしていたパーカーを圭斗に渡した。
圭斗はパーカーを受け取り、肩にかけた。
そんな仕草もスマートで大人っぽい。
「結局一日借りちゃった……。ありがとね」
「いえいえ、どういたしまして」