蜜色トライアングル【完】
握りしめた拳に血がにじむ。
由弦は衝動に駆られるように走り出した。
「なんでっ……、あいつがっ……」
走りながら、狂ったように慟哭する。
自分がどれだけ想っても……。
その想いは、行き場をなくしてしまった。
木葉が欲しいと、どれだけ哭いても……もう……。
「……っ……」
夜空を見上げると、雲の隙間に下弦の月が浮かんでいた。
まるで泣いているような月の姿が、視界の中で滲んでいく。
由弦はひたすら月を見上げていた。
……何かを見ていないと、とても耐えられそうになかった。
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