蜜色トライアングル【完】



握りしめた拳に血がにじむ。

由弦は衝動に駆られるように走り出した。


「なんでっ……、あいつがっ……」


走りながら、狂ったように慟哭する。

自分がどれだけ想っても……。

その想いは、行き場をなくしてしまった。


木葉が欲しいと、どれだけ哭いても……もう……。


「……っ……」


夜空を見上げると、雲の隙間に下弦の月が浮かんでいた。

まるで泣いているような月の姿が、視界の中で滲んでいく。

由弦はひたすら月を見上げていた。

……何かを見ていないと、とても耐えられそうになかった。



<***>

< 192 / 222 >

この作品をシェア

pagetop