蜜色トライアングル【完】
翌日。
眠れない一夜を過ごした木葉は、覚束ない足取りで家を出た。
冬青は仕事で昨日から居らず、由弦もこのところ夜になるといなくなる。
まるで、一人になってしまったかのような寂しさ……。
誰に聞くこともできず、木葉は頭を抱えて必死に記憶を探った。
『……木葉ちゃん……』
『……は……じゃないのよ……』
思い出そうとすると背筋がぞっとする。
恐らくあまり良い記憶ではないのだろう。
でも……気になる。
思い出さないわけにはいかない。
そんな気がする。
あの井戸のところに行けば、何か思い出すかもしれない。
木葉はふらふらと近所の氏神神社に向かった。
家から徒歩20分ほどの場所にあるその神社は、ここ10年ほど来ていない。
境内に入り、鳥居をくぐったところで木葉は足を止めた。