蜜色トライアングル【完】
そして10分後。
圭斗がロープを抱えて戻ってきた。
近くの木に手早く括りつけ、井戸の中にロープを垂らす。
『木葉、そのロープを体に巻きつけて、縛って!』
『……う、うん』
木葉は圭斗に言われた通り、かじかむ手でロープを体に巻き、縛った。
『いくよっ、せーのっ』
圭斗の掛け声とともにロープが引っ張られる。
ぐいと体が上に持ち上げられ、木葉は井戸から引き揚げられた。
全身ぐっしょりと濡れ、寒さでぶるぶると震える。
『大丈夫か、木葉』
寒さに震える木葉を冬青が肩を掴んで心配そうに覗き込む。
由弦は泣きながらも、ほっとした表情で木葉に抱きついてきた。
由弦の暖かさがじんわりと体に伝わり、木葉は濡れた手で由弦の頭を撫でた。
そのとき。
鳥居の向こうから、30歳くらいの女性が息せき切って走ってきた。