蜜色トライアングル【完】



そして10分後。

圭斗がロープを抱えて戻ってきた。

近くの木に手早く括りつけ、井戸の中にロープを垂らす。


『木葉、そのロープを体に巻きつけて、縛って!』

『……う、うん』


木葉は圭斗に言われた通り、かじかむ手でロープを体に巻き、縛った。


『いくよっ、せーのっ』


圭斗の掛け声とともにロープが引っ張られる。

ぐいと体が上に持ち上げられ、木葉は井戸から引き揚げられた。

全身ぐっしょりと濡れ、寒さでぶるぶると震える。


『大丈夫か、木葉』


寒さに震える木葉を冬青が肩を掴んで心配そうに覗き込む。

由弦は泣きながらも、ほっとした表情で木葉に抱きついてきた。

由弦の暖かさがじんわりと体に伝わり、木葉は濡れた手で由弦の頭を撫でた。

そのとき。


鳥居の向こうから、30歳くらいの女性が息せき切って走ってきた。


< 206 / 222 >

この作品をシェア

pagetop