蜜色トライアングル【完】
よろしくと続けた圭斗の視線が、木葉の後ろに泳ぐ。
振り返ると、サラダを盆に載せた由弦が歩いてくるのが見えた。
「お待たせ。これサラダ」
由弦が置いたサラダはキャベツ・レタスの上に豆腐と胡麻味噌がかかっているもので、花壱では一・二を争う人気の和風サラダだ。
豆腐が好きな木葉は嬉しそうに目を輝かせた。
「おいしそ~」
「ドレッシング足りなかったら持ってくるから言えよ?」
「ん、ありがと」
「オレ、今日8時に上がるから。それまで待ってろ」
由弦は木葉を見下ろし決定事項のように言う。
押し黙った木葉の前で、圭斗が由弦を面白そうに見上げた。
「姉を送るのは弟の義務ってか? たまには交代しないか?」
「交代?」
「お前は凛花を送り、おれが木葉を送る。たまにはいいだろ?」
「……却下」
さくっと断り、由弦は氷のような視線で圭斗を見下ろした。
その剣のような鋭さに、傍で見ていた木葉は内心で息をついた。