蜜色トライアングル【完】
「……っ……」
――――家に帰っても、誰もいない。
いつか近い将来、それが普通になってしまうのかもしれない。
木葉を一人残し、それぞれの進むべき道へと進んでいく……。
「……」
――――寂しい。
ひとりは、さみしい。
今は父が傍にいる。
しかし父はいつか、木葉より早くこの世を去るのだ。
そうしたら……自分は……。
「……うっ……くっ……」
知らずのうちに木葉は涙を流していた。
一粒、また一粒と、涙がとめどなく頬を流れ落ちる。
きっと自分は忘れたくて忘れていたのだろう。
忘れていれば、二人と本当の兄弟だと思い込んでいれば……ずっと一緒にいられると無意識のうちに思っていたのかもしれない。
事実は、変わらないのに……。
「お兄ちゃん……由弦……」