蜜色トライアングル【完】



今帰っても、二人にどんな顔をすればいいのかわからない。

そして圭斗も恐らくそのことを知っているはずだ。

あの場に圭斗もいたのだから……。


「圭ちゃん……」


皆、木葉が忘れていることを知った上で今まで接してきたのだろうか?

なぜ皆、そのことを木葉に言わなかったのか……。

知らなかったのは、自分だけだったのだろうか?


「……うっ……」


木葉は目元を抑え、道端に座り込んだ。

どうすればいいのかわからない。


誰かに、聞いてほしいのに……。


混乱する頭に、一つの名前が浮かび上がった。

……姉のような優しい微笑み。

木葉の心を包み込む、あの眼差し……。


「小野寺さん……」


長野で別れた時の美しく優しい笑顔が脳裏に浮かぶ。

……相談できるのは彼女しかいない。


木葉は携帯を取り出し、縋る思いで彼女の番号にかけた。


< 211 / 222 >

この作品をシェア

pagetop