蜜色トライアングル【完】
今帰っても、二人にどんな顔をすればいいのかわからない。
そして圭斗も恐らくそのことを知っているはずだ。
あの場に圭斗もいたのだから……。
「圭ちゃん……」
皆、木葉が忘れていることを知った上で今まで接してきたのだろうか?
なぜ皆、そのことを木葉に言わなかったのか……。
知らなかったのは、自分だけだったのだろうか?
「……うっ……」
木葉は目元を抑え、道端に座り込んだ。
どうすればいいのかわからない。
誰かに、聞いてほしいのに……。
混乱する頭に、一つの名前が浮かび上がった。
……姉のような優しい微笑み。
木葉の心を包み込む、あの眼差し……。
「小野寺さん……」
長野で別れた時の美しく優しい笑顔が脳裏に浮かぶ。
……相談できるのは彼女しかいない。
木葉は携帯を取り出し、縋る思いで彼女の番号にかけた。