蜜色トライアングル【完】
「小野寺さん……あの、私……」
木葉は言いかけ、口をつぐんだ。
その表情はひどく憔悴し、視線が定まらない。
その不安定な様子に馨は眉根を寄せた。
「どうしたの? ……何かあったの?」
「あ……あの、私……」
「ここで話すより、部屋の方が落ち着いて話せるわね。行きましょ、木葉ちゃん?」
馨は木葉の手をそっと掴んだ。
ひんやりとした美しい指先。
あ……と思っているうちに馨はエレベータの方へと歩き出す。
木葉は手を引かれるままエレベータに乗り、高層階へと上がった。