蜜色トライアングル【完】
「狼と羊を一緒に帰らせるワケないだろ。何をされるかわかったもんじゃない」
「あのな、おれが木葉を襲うわけないだろ。そもそも師範代の木葉を誰が襲えるってんだ?」
「じゃあ何だ? あんたが木葉に守ってもらうってのか? 最悪だな」
「お前なあ……」
呆れたように言う圭斗を、由弦はさらに冷たい瞳で見つめる。
木葉は背に流れる冷や汗を感じながら二人の様子を見つめていた。
木葉に対する由弦の態度は昔から変わらない。
つっけんどんで意地悪で、でも木葉のことをさりげなく気遣ってくれる。
だが圭斗に対する態度には敵意が満ちており、それは年を経るごとに悪化の一途を辿っている。
凍った空気に木葉がたじろいでいると、入り口の方から甲高い声がした。
「こんにちはぁ」
ガラガラと扉を開けて入ってきたのは、凛花だった。
完璧な巻き髪に形よく引かれたルージュ、バッチリ整えられた目元はまさに『オンナ』という感じだ。
凛花は黒く縁どられた大きな目で店内をきょろきょろと見回している。
「凛花ちゃん、こっち!」