蜜色トライアングル【完】



木葉はとっさに立ち上がって手を振った。

凛花は三人の姿を認めると、カツカツとヒールを鳴らして近づいてくる。

周りの視線を集めていることなど気にした様子もなく、凛花はコートを脱いだ。


「まいったわ~、アイラインがうまく引けなくて」

「とりあえずビールでいいか?」


由弦が従業員の顔に戻って凛花に尋ねる。

凛花が頷くと、由弦は踵を返しカウンターへと戻っていった。

その態度とテーブルに漂う冷たい空気に何かを感じたのか、凛花は首を傾げた。


「……あら、どうかしたの?」

「なんでもないよ」


木葉は慌てて言った。

そんな木葉をふーんと眺めた後、凛花はテーブルの上を見渡した。


「あー、お腹すいたっ! サラダもらおっと」


凛花は箸と皿を取り、大皿からサラダを取り始めた。

凛花は見かけによらずかなりの大食いだが、いくら食べても太らない体質らしく体型は昔から変わらない。

木葉は食べたら食べた分だけ体についてしまう体質なので、凛花の体質を心から羨ましいと思う。

凛花はサラダをつつきながら木葉に視線を投げた。


< 23 / 222 >

この作品をシェア

pagetop