蜜色トライアングル【完】
木葉はとっさに立ち上がって手を振った。
凛花は三人の姿を認めると、カツカツとヒールを鳴らして近づいてくる。
周りの視線を集めていることなど気にした様子もなく、凛花はコートを脱いだ。
「まいったわ~、アイラインがうまく引けなくて」
「とりあえずビールでいいか?」
由弦が従業員の顔に戻って凛花に尋ねる。
凛花が頷くと、由弦は踵を返しカウンターへと戻っていった。
その態度とテーブルに漂う冷たい空気に何かを感じたのか、凛花は首を傾げた。
「……あら、どうかしたの?」
「なんでもないよ」
木葉は慌てて言った。
そんな木葉をふーんと眺めた後、凛花はテーブルの上を見渡した。
「あー、お腹すいたっ! サラダもらおっと」
凛花は箸と皿を取り、大皿からサラダを取り始めた。
凛花は見かけによらずかなりの大食いだが、いくら食べても太らない体質らしく体型は昔から変わらない。
木葉は食べたら食べた分だけ体についてしまう体質なので、凛花の体質を心から羨ましいと思う。
凛花はサラダをつつきながら木葉に視線を投げた。