蜜色トライアングル【完】



「そういえば、木葉。礼サマが桐沢道場に来るって聞いた?」

「今、圭ちゃんからちょっと聞いたけど。まだお父さんからは何も……」


礼サマこと武内礼司の話になると、凛花の目が爛々と輝く。

凛花のこういう表情は本当に綺麗だなと感心する半面、木葉もこういう『憧れ』の対象が欲しいと思わなくもない。

凛花は昔からミーハーな部分があり、小学校の頃からいつも誰かを追いかけている。

また惚れっぽい性格でもあり、26歳にして付き合った彼氏は6人。

今は付き合っている人はいないようだが、過去の彼氏との赤裸々な話に恋愛奥手の木葉はいつも戸惑ってしまう。


木葉自身は高校の頃に告白された経験はあるものの、手を繋ぐこともなく一か月で終わってしまった。

その理由は……。

――――あまり思い出したくない。


「何かわかったら、すぐに教えてね! ……あぁ、礼サマの和服姿……。想像しただけでご飯三杯はイケるわ」


既に何の対象なのかよく分からないが、凛花の彼に向ける情熱は確かだ。

唖然とする木葉の前で、圭斗が妹を見る。


< 24 / 222 >

この作品をシェア

pagetop