蜜色トライアングル【完】
土日のみ木葉が食事を作り、掃除は週末に一回、まとめて行う。
洗濯は基本的に各自で行っているが、父の服のみ木葉が自分の物と一緒に洗っている。
以前は由弦の服も一緒に洗濯していたが、高校に入ってからは由弦が自分で洗濯するようになった。
一緒にやるよと言っても頑なに断られてしまう。
自立するのは良いことだが、姉としてはちょっと寂しい。
「もう兄貴、帰ってるかな?」
「今日は西洋商事で連結の会議がどうとか言ってたから、まだじゃないかな。5月中旬までは忙しいよ、きっと」
木葉と由弦の上には、兄が一人いる。
兄は父の道場経営を手伝う傍ら公認会計士をしており、平日は会計事務所で仕事をしている。
兄はもともと道場経営のために簿記を学び始めたのだが、生来の頭の良さも手伝い、大学在学中に公認会計士の資格試験に通ってしまった。
相当な難関試験をあっさりパスした兄には大手の監査機関や会計事務所から声がかかったが、兄は道場の経営に差し支えるという理由で町内の中規模の会計事務所を選んだ。
兄は自他と共に認める『キレ者』だ。
――――いろいろな意味で。