蜜色トライアングル【完】
「あいつは開業医だしな。玉の輿狙うにはちょうど良いか?」
「何言ってんの。圭ちゃんは従兄だし、そんなこと考えたこともないよ」
「……木葉がそうでも、あいつはどうだか」
由弦は視線をそらし、口の端で笑う。
木葉は由弦の態度に眉を顰めた。
昔は由弦の表情を見れば考えていることなどすぐにわかったのに、今は由弦の考えていることがよくわからない。
由弦のことがわからなくなったのは、由弦が高校に入った頃からだ。
それまで『姉貴』と呼んでいたのが、二人きりの時には『木葉』と呼ぶようになった。
別に呼び捨てにされることが嫌なわけではないが……。
思春期や反抗期を経て、由弦の中で何か変わってしまったのだろうか?
眉根を寄せた木葉に、由弦は続けて言う。
「先に言っとくけどな。オレは反対。木葉とあいつじゃ、釣りあわねぇよ」
「釣り合わないって……。由弦、あのねぇ……」
「木葉は……もしオレが……」
言いかけて、由弦はふと顔を上げた。
つられて木葉もその視線の先を見る。