蜜色トライアングル【完】
「……で、何?」
「あの……怖い、の。だからっ……」
遥は華奢な躰を震わせて由弦を見上げる。
その小動物のような震える瞳は男であれば庇護欲をかきたてられるものだろう。
たいていの男ならグッとくるであろうその目線を前に、しかし由弦は静かに首を振った。
「警察呼べば?」
「で、でもっ……」
女――遥は必死にふるふると首を振る。
彼女の心の動きが手に取るようにわかった木葉は、慌てて二人の前に立った。
「由弦、同級生なんでしょ?」
「……木葉?」
「こんなことがあった後じゃ、彼女も怖いでしょ。送ってあげたら?」
その言葉を待っていたかのように遥の目が輝く。
眉根を寄せた由弦を気にすることなく、木葉は笑って続ける。
「見ての通り、腕は確かだからボディガードには丁度良いと思うよ?」
「……あの、あなたは?」
「姉です。愛想のない弟でごめんね? とりあえず今日のところは弟に送らせるから」
「おい木葉、何勝手に決めてんだよ?」
由弦は険しい瞳で木葉を見る。
木葉は軽く首を振り、びしっと言った。