蜜色トライアングル【完】
「お兄ちゃん……」
桐沢冬青。26歳。
木葉の兄で、名前の通り冬の青を思わせる青みがかった切れ長の瞳が印象的だ。
さらっとした艶やかな黒髪に、精悍な頬、形の良い唇。
濃紺の道着に包んだ身体はすらりとしており、圭斗と同じく木葉より頭二つ分ほど高い。
由弦が春を思わせる華やかな美形としたら、こちらは冬を思わせる怜悧な美形だ。
冬青は木葉をちらりと見た後、佐山に視線を流す。
佐山は冬青の迫力ある美貌に言葉を失ったように立ち尽くしている。
冬青は佐山を見下ろし、その形の良い唇を開く。
「見たところはまだ若いようだが。30手前か?」
「……」
「腹回りは脂肪の塊のようだな。医者には行っているのか?」
佐山は取り憑かれたように冬青を見上げたまま、こくりと頷く。
まるで神にでも話しかけられたかのようだ。
佐山が角倉内科医院に来た理由は会社の検査でメタボ検診に引っかかったからだ。
木葉もそれを知ってはいたが、個人情報なので言うわけにいかない。
「ちょっと失礼」