蜜色トライアングル【完】
「あ、お兄ちゃん」
冬青は先が割れた竹刀を手にしている。
恐らく摩耗し壊れてしまったものだろう。
「倉庫の備品を確認してきた。これは廃棄だ」
「予備はまだあるのか?」
「残り3本ほどだ。親父がこの間注文したものがそろそろ届くだろう」
冬青は竹刀を壁際に置き、手を洗って卓についた。
涼やかな瞳で父や妹弟の顔を見回す。
その目線が木葉の上でぴたりと止まった。
「そういえば。あの男」
「……佐山さん?」
「お前、知り合いだったのか? 俺が行った時、何やら話していたようだったが」
冬青はそのかすかに青い瞳でじっと木葉を見つめる。
兄と言えど、こうもじっと見られると居心地が悪い。
――――今更聞くかそれを?
と思う木葉に、由弦も怪訝そうな目を向ける。
二人の視線を受け、木葉はため息交じりに切り出した。