蜜色トライアングル【完】
「この間の水曜に、病院に来たの」
「病院って……圭斗の病院か?」
「そ。で、そのときたまたま私が受付に座ってて……」
木葉が言い終わる前に、冬青が軽く手を挙げた。
わかったと言いたげに軽く首を振る。
「お前に目を付け、ここに来たってわけか。去年から数えて、9人目だな?」
「……っ」
「お前、変なフェロモンでも出しているのか? 一度病院で診てもらったらどうだ?」
兄の言葉に、木葉は思わず仰け反った。
フェロモンって……。
凛花にも言われたはものの、よりによってこの兄にだけは言われたくない。
ムクれた木葉に、横から由弦が口をはさむ。
「なんだよ、姉貴。そんなこと一度も聞いてねぇぞ?」
「……言ってなかったしね」
「水曜って、花壱に来た日か? 圭斗のやつ、そんなこと一言も……」
由弦は言いながらはっとしたように息を飲んだ。
そのままぎろりと木葉を見る。