蜜色トライアングル【完】
兵藤は嬉々として竹刀を拭き始める。
その姿を見、木葉は内心で大きくため息をついた。
6年前。
木葉は兵藤から告白され、付き合いを始めた。
これまで異性と付き合ったことのなかった木葉は告白に驚いたものの、とても嬉しく感じ、付き合うことを承諾した。
真面目で優しい彼との未来は、とても輝かしいものになると思っていた。
……しかし付き合い始めてから二週間後。
木葉の家の道場を見てみたいと言って桐沢道場に向かった兵藤は、そこで運命的な出会いをしてしまった。
――――剣の練習をしていた冬青に。
冬青の繰り広げる剣の世界に兵藤は魅了され、その場で入門してしまった。
まるで今日の佐山のように。
……それから、6年。
二人の仲は早々に自然消滅し、木葉はいつしか『師姉』と呼ばれるようになっていた。
元カレに『師姉』と呼ばれるこの切なさは、何と言えばいいのだろうか……。
「一生、お兄ちゃんにはわからないだろうな……」