蜜色トライアングル【完】
その後大学に入り、付き合う直前までいった男友達も何人かいたが、冬青に会うと兵藤と同じように吸い寄せられるように入門してしまった。
家で会うのならまだ良いが、道場で冬青に会ってしまうとほぼ百発百中だ。
結局それから彼氏らしい彼氏はできず、彼氏いない歴をひたすら更新し続けている。
木葉ははぁと青い吐息をついた。
――――フェロモンを診てもらうべきは、やはり自分ではなく兄の方だ。
このままでは自分の未来もだが、兄の未来も危うい。
覚えている限り、兄に彼女がいたことはない。
26歳であれば彼女の一人や二人、いてもおかしくはないのだが……。
これほどの美貌と頭脳、そして剣の腕を持ちながら男だらけの世界を突き進む兄。
……兄は一体どこを目指しているのか。
木葉は悶々と考えながら、モップを床に押し付けていた。
その時。
家の方から、ガシャーンという大きな物音が聞こえた。
何か大きなものが落ちたような音だ。
『おい、親父っ!?』