蜜色トライアングル【完】
「お兄ちゃん、病室番号って聞いた?」
「503と言っていた」
「503か……正人おじさんの病室は525だったね。わりと近いね」
木葉は窓の外を見つめながら呟いた。
木葉の母・花枝には弟が一人いるが、20年ほど前の事故で植物状態となり、桜庭病院に入院している。
名は山神正人。山神は母親の旧姓だ。
木葉も兄弟も年に数回この叔父を見舞っている。
といっても意識がないので、一方的に話しかけているだけだが。
まさか同じ病院に入院することになるとは……。
やがて車は病院の門をくぐった。
入院棟の駐車場に車を止め、受付へと向かう。
「あっ、兄貴!」
入院棟の入り口近くに由弦が立っている。
見ると、由弦は事務のカウンターで何やら書類を書いている。
どうやら入院手続きのようだ。
「印鑑と保険証、ある?」
「持ってきた」