蜜色トライアングル【完】
<side.冬青>
二人が病室を出た後。
冬青は窓際の椅子をベッドの脇に寄せ、腰かけた。
青みがかった、澄んだ静かな瞳で清二を見る。
清二は眉根を寄せ、疲れたように口を開いた。
「まだ自分では若いつもりだったんだがな……」
「……親父……」
「そろそろ潮時かもしれないな。しばらく道場はお前に任せる」
清二の言葉に、冬青ははっとしたように背筋を伸ばした。
清二はベッドの中から冬青を見上げている。
顔は土気色だが、眼光は道場で見るものと同じだ。
「お前の剣技も経営手腕も、とうにわしを超えている。何も心配はない」
「しかし……」
「そう気負うな。正式に代替わりする前の試し期間とでも考えればよい。お前の好きなようにやってみろ。そして……」
真剣な目が冬青をひたと見つめる。
冬青は息を飲んだ。
清二がこういう目をするときは、大事なことを告げるときだ。