蜜色トライアングル【完】
「もう一度考えてみよ。この道が、本当にお前の望む道なのか」
「……親父?」
「お前はわしへの義理でこの道を選んだ。木葉のことも……」
清二はゆっくりと視線を窓の外に投げた。
その瞳に夕暮れの雲が映る。
窓から入る風が、カーテンをわずかに揺らす。
冬青は凍りついたように固まったまま、父の言葉を何度も胸の中で反芻していた。
――――義理。
確かにそれは、事実だ。
父も、道場も、そして……木葉も。
しかし、今は……。
冬青は父の横顔を見つめながら、絞り出すように言った。
「確かに最初はそうだったかもしれない。……だが今は違う。親父も、道場も、木葉も。俺自身が、守りたいと思っている」
「……」
「俺自身が、必要としているんだ。多分、由弦も……」