蜜色トライアングル【完】
「学生、学生って……。そんなに社会人ってエライのかよ?」
「エライとか、そういう問題じゃないでしょ。学生でいられる時間なんてわずかなんだから、ちゃんと勉強しなさい」
「勉強して、バイトして、遊んでってか? ……はー、窮屈だなマジで……」
由弦の機嫌がみるみるうちに悪くなっていく。
だがこの件では木葉も譲ることはできない。
不機嫌ついでに、木葉は気になっていたことを聞いてみることにした。
「ところで、この間の件だけど」
「……?」
「彼女、あれからちゃんと送った?」
木葉が言うと、由弦は見るからに嫌そうな顔をした。
缶コーヒーを床に置き、背もたれに寄りかかって足を組む。
「送ったよ。駅までだけどな」
「家まで行かなかったの?」
「そっちの方が問題だろ。……それとも何? そういう関係を期待してたわけ?」
由弦は刺々しい声で言う。
木葉はため息をつき、首を振った。