蜜色トライアングル【完】
「そういうわけじゃないけど……。で? その後は何かあった?」
「次の日、校門の前であの女が待ってた。お礼にって手作り弁当持ってきた」
「へー……。今時珍しいくらい健気じゃない? で、食べたの?」
「まさか。別の奴にやった。あんな、何入れられてるかわからないモン、食う気になるかよ」
心底嫌そうに由弦は続ける。
あまりのことに、木葉は一之瀬遥に少し同情した。
由弦にも彼女はいた試しがないし、そもそも兄弟でそんな話をしたことはほとんどない。
由弦の言動を見ているとまるで女嫌いのようにも見える。
一之瀬遥のようなカワイイ娘が自分に弁当を作ってきたなど――――自分が男であれば、舞い上がって喜ぶだろう。
――――もしかして。
木葉は心に沸いたイヤな考えに、ぞっとしながら口を開いた。
「あのさ……。もしかして、由弦って……」
「ン?」
「女の人に興味ないとか。……そんなこと、ない?」
恐る恐る木葉が言うと、由弦は目を丸くした。
「はぁ?」
「あんなにカワイイ子なのに……。そりゃ、由弦以上にキレイな娘ってのもなかなかいないかもしれないけど、でも……」