蜜色トライアングル【完】



なまじ身近に整った顔立ちの人間が多いせいで、美的感覚が歪んでしまったのだろうか?

姉としてはまっとうな道を歩んでほしいが、本人の嗜好なら涙を飲んで認めるしかない。

……と、木葉が内心で悲壮な決意をしたとき。

由弦がぐいと木葉を引き寄せた。


「木葉さ。何考えてんの?」

「えっ」

「オレが男を好きだって? ……そんな笑えない冗談、聞きたくもないね」


由弦はずいっと木葉に顔を近づける。

由弦の長い睫毛、白皙の頬、整った唇が眼前に迫る。

それはまさに神が与えた完璧な配置だ。

木葉は思わず息をのんだ。


「オレが好きなのは、女。……ただ一人だ」

「え……」

「でも世間的に許されねぇ。……たぶんな」


由弦の目が木葉を射抜く。

長い睫毛の奥の焦げ茶の瞳が陰り、かすかに色を纏う。

まるで心を絡め捕られるかのように――――逃げられない。

由弦の瞳が木葉の心の奥をゾワリと撫でる。

その感覚に危険な何かを感じ、木葉は慌てて口を開いた。

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