蜜色トライアングル【完】
三章
1.圭斗のカフェオレ
父が入院した翌日。
木葉は透かし編みのセーターにロングスカートという格好で、角倉家の玄関の前に立っていた。
呼び鈴を押すと、中からすぐに女性の声が響く。
『木葉ちゃんね、ちょっと待ってて?』
パタパタとスリッパの音がし、玄関の扉が開いた。
顔を覗かせたのは緩いパーマをかけた初老のご婦人だった。
婦人の名は角倉昭子。
伯父・角倉清一の妻で、圭斗と凛花の母である。
「いらっしゃい、木葉ちゃん」
「こんにちは、昭子おばさん」
「お父さんの具合はどう? ……あぁ、ここで話すより中で話した方がいいわね。さぁ、上がって」
「お邪魔します」
木葉はぺこりとお辞儀をし、靴を脱いだ。
玄関に上がり、脱いだ靴をきっちりと揃える。
それを見ていた昭子はにっこりと嬉しそうに笑った。
「木葉ちゃんがうちに来るのは久しぶりね。医院の方ではよく会うけど」
「そうですね」
「リビングで座って待ってて。今、圭斗を呼んでくるから」