蜜色トライアングル【完】
木葉はローボードの上の写真立てに目を向けた。
若かりし伯父と伯母、そしてこの前に行儀よく椅子に腰かけている圭斗と凛花。
20年ほど前の写真だろうか。
その横には15年ほど前、桐沢家と角倉家で一緒に行った旅行の写真がある。
海水浴だろうか、ビーチボールを抱えた木葉と凛花の後ろに、シュノーケリングの格好をした冬青と圭斗が立っている。
その脇で、大きな浮き輪を必死で抱えている由弦の姿。
――――懐かしい想い出。
写真を見ていた木葉はなぜか胸の痛みを覚えた。
「楽しかったな、旅行。また皆で行けたらな……」
木葉は写真の中の幼い兄弟をじっと見つめた。
――――人は変わるものだ。
冬青も由弦も、そして自分も、ずっとあの頃のままというわけにはいかない。
こうして昔の写真を見ると胸が痛くなるのは、あの頃の自分を幸せだったと、懐かしいと思うからなのだろうか。
木葉は昨日の由弦とのことを思い出した。
……本当に、わけがわからなかった。
言葉も言動も、そして……由弦の考えも。
由弦とのここ数日のことを考えると、まるで薄氷の上を歩いているかのような、得体のしれない心もとなさがある。
木葉は悩みを振り切るように、写真から目をそらした……。