蜜色トライアングル【完】
木葉はきょろきょろと辺りを見回しながらソファに座っていた。
やがて、軽いノック音とともに圭斗が姿を現した。
「待たせたね」
「圭ちゃん」
圭斗は手にマグカップが二つ載った盆を持っている。
その表情はいつもと変わらず、穏やかで優しい。
圭斗は慣れた様子で片方のマグカップを木葉の前に、もう片方を向かいの自分の前に置く。
「ありがとう」
木葉は昔から圭斗の作るカフェオレが好きだった。
薬の調合か何かと通じるところがあるのか、圭斗の作るカフェオレはコーヒーとミルクのバランスがよく、木葉の口に合っている。
普通の客には昭子がお茶を出すが、木葉が来た時には圭斗が手製のカフェオレを出すのがいつのまにか慣例となっている。
「……久しぶりだな、圭ちゃんのカフェオレ」
「お気に召しましたら幸いです」
冗談めかして言った圭斗に、木葉はくすりと笑った。
さっそくマグカップに手を伸ばす。
一口飲み、その変わらぬ美味しさに思わず微笑む。
その幸せそうな笑顔に、圭斗も微笑した。