蜜色トライアングル【完】
「お望みとあらば、百杯でも千杯でも、木葉のために作るよ?」
「あはは。圭ちゃんのお嫁さんになる人は幸せかもね? こんな美味しいカフェオレが毎日飲めるんだもの」
「じゃあおれの奥さんになるかい? もれなく毎朝、カフェオレがついてくるよ」
「うーん、フレンチトーストもつけてくれるなら考えなくもないかな?」
いたずらっぽく笑い、木葉は圭斗を見た。
圭斗は黒のコーデュロイのパンツの上に薄黄色のシャツを着、グレーのボーダーカーデを羽織っている。
その姿は雑誌のモデルのように格好いい。
圭斗は冬青や由弦のように群を抜いた美形という訳ではないが、優しげな容貌と穏やかな雰囲気は、見ている者の心を惹きつける不思議な魅力がある。
――――これで恋人がいないほうがおかしい。
圭斗には過去に何人か彼女がいたと凛花越しに聞いてはいるが、直接聞いたことはない。
今ははっきりとはわからないが、このルックスで、この性格で、いないはずがないだろう。
昔、まだ木葉が幼稚園児の頃。
木葉は圭斗にとても懐き、『大きくなったら結婚する!』と周囲に宣言して回っていた。木葉は昔から6つ歳の離れたこの従兄が大好きだった。
父のようで、兄のようで……それでいて友達のように気さくで、優しくて……。
怜悧な美貌でいつでも冷静な冬青より、圭斗の方が『お兄ちゃん』という感じがした。
大きくなるにつれて互いに自然と距離を置くようになり、今ではプライベートで会うこともめったになくなってしまったが、圭斗に対する親愛の気持ちは変わらない。
しみじみ思いながら、木葉は口を開いた。