蜜色トライアングル【完】
「で、本題なんだけど。昨日電話で話した通り、お父さんが入院することになって……」
「おれも昨日、桜庭病院に電話して容体を聞いてみた。あそこの内科におれの同期がいるんだ」
「え、そうなの?」
「右足は複雑骨折、骨盤にヒビ……。やはり退院まで一か月半はかかるだろうね。その後も多少、リハビリが要ると思う」
瞳を陰らせて圭斗は続ける。
木葉は昨日の父の姿を思い出した。
右足を釣られた痛々しい姿に、胸が痛む。
「でね。お父さんが入院している間、私とお兄ちゃんとで平日の剣術教室を担当することになったの」
「冬青と?」
「うん。平日はいつも夕方からだから、私が夕方の回を、お兄ちゃんが夜の回を担当する予定。で、病院の事務を……しばらくの間、午前で切り上げさせてほしいの」
角倉内科医院は午前の診療が12時半までで、午後の診療が3時から始まる。
昼休みが2時間以上あるとはいっても、その間は残務処理で昼休みは実質一時間しかないのが実情だ。
剣術教室の夕方の回は3時から始まる。
夕方の剣術教室に出ようと思ったら、病院を午前で上がるしかない。
木葉の言葉に、圭斗は軽く頷いた。