蜜色トライアングル【完】
「そう? ……木葉が望むならそれでもいいよ。木葉にも酒の相手してもらうけどね?」
圭斗は言い、木葉に視線を流した。
その瞳はいつもと違い、どことなく色っぽい。
『大人の男性』の色香とはこういうものだろうか?
木葉は内心ドキリとしながらまじまじと圭斗を見つめた。
木葉はまだこういう表情をすることはできない。
まだまだ子供だな、と再認識した木葉に圭斗は続ける。
「今日はこの後、何か予定あるの?」
「んー、とりあえずこれからお父さんのところに行って……。そのあとは、15時の剣術教室までは特にないかな」
「じゃあおれも、一緒に叔父さんのところに行くよ。その後、一緒にランチに行こう。駅前にイタリアンの店がオープンしたんだ。この間行ったけど、なかなか良かった」
誰と行ったのか?……は聞かない方が良いのだろう。
木葉は目を輝かせ頷いた。
木葉は凛花と近くのカフェに行くことはよくあるが、凛花以外と外食することはめったにない。
冬青は日々忙しいため『腹に入るものなら何でもよい』という感じだし、父と由弦は『外食より家で食べたい』派だ。
特に由弦はその傾向が顕著で『外でヘンなものを食べるより木葉が作ったものを食べる方がよほどいい』と言って憚らない。