蜜色トライアングル【完】
2.由弦の彼女
二週間後の金曜。
午後。
木葉は駅前の薬局に雑貨を買いに来ていた。
その帰り道、あるカフェの脇を通りかかったとき……。
「……あれ、由弦?」
木葉は中に由弦の姿を見つけ、驚いて足を止めた。
由弦は奥の席に座り、イアホンで音楽を聴きながらノートにペンを走らせている。
由弦は冬青とまではいかないが、なかなか成績優秀で今の大学にも推薦枠で入った。
家では食事のとき以外はたいてい各自の部屋にいるため、勉強をしている姿などめったに見ることはない。
やがて由弦はペンを置き、顔を上げた。
木葉には気づいていないようだ。
由弦の視線の先には、髪の長い女性の姿がある。
……一之瀬遥だ。
遥は由弦の前に座ると、手にしていたコーヒーのカップを置いた。
由弦の表情は髪で陰になってこちらからは見ることはできないが、遥の顔はにこやかだ。