蜜色トライアングル【完】
3.病院にて
夕方の教室が終わった後。
木葉は迎えに来た圭斗の車に乗り込み、病院へと向かった。
父が入院してから二週間が過ぎた。
この病院に来るのも、もう何度目だろうか。
「失礼しまーす……」
手を消毒して病室の扉を開けると、入り口のおばさんがにっこりと笑った。
「おや今日は、角倉の若先生と一緒かい」
「こんにちは、おばさん」
「あんたさんの兄弟といい、若先生といい。はぁ……眼福、眼福」
まるで仏様でも拝むかのように手をすり合わせる。
木葉は笑いながら、父のベッドに近づいた。
「具合はどう?」
父はベッドに横たわったまま木葉の方を向いた。
腰を痛めているためまだ身を起こすことはできないが、顔色は入院当時より格段に良くなっている。
「ぼちぼちだな。圭斗くんも来てくれたのか、悪いな」
「お加減はどうですか?」