蜜色トライアングル【完】



圭斗は客用の椅子を二つ引き寄せ、木葉に片方を勧めた後、もう片方に座った。

今日は病院ということも意識してか、茶色いズボンに淡いグリーンのストライプシャツ、クリーム色のジャケットという格好だ。

病院では黒や濃い灰色は喪の色として忌避される。


「これを、うちの書斎から持ってきました」


圭斗は持ってきた紙袋から本を二冊取り出した。


『男の裁縫――浴衣・作務衣作成入門――』

『英国式ガーデニング』


本の表紙を見、木葉は眉根を寄せた。


「え?」


裁縫もガーデニングも父の普段の姿からは想像がつかない。

圭斗は本を清二に渡し、にこやかに微笑んだ。


「父の書斎にありました。父が借りてそのままだったので……」

「あぁ、思い出した。昔、何か趣味でも始めようと思って買ったんだが、時間がなくて読めずじまいでな。貸したきり忘れていた」


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