蜜色トライアングル【完】
4.圭斗の想い
――――二十分後。
木葉と圭斗は父の病室を後にした。
夜の病院は暗く、どこかひんやりしている。
ナースステーションの脇を通り過ぎようとしたとき、中から男性の声がした。
「角倉!」
声とともに白衣を着た若い男性が部屋から出てくる。
茶髪の髪を後ろに流し、スタイリッシュな眼鏡をかけている。
今時の若者という印象の先生だ。
男の姿を見、圭斗は足を止めた。
「菅波か」
菅波と呼ばれた男は聴診器を首から下げており、胸のプレートには『内科』とある。
どうやら圭斗の同期の医者らしい。
「桐沢さんの見舞いか? ……あれ、この子は?」
「桐沢木葉です。父がお世話になってます」
木葉はぺこりと頭を下げた。
菅波は首を傾げ、木葉をじっと見つめる。