蜜色トライアングル【完】
「木葉……木葉ちゃん……あれ、どこかで……」
菅波はぶつぶつ呟いていたが、やがて思い至ったらしく、はっと顔を上げた。
「そうだ。凛ちゃんから聞いたんだ」
「……凛ちゃん?」
「昔、凛花ちゃんと少し付き合ってたことがあってね。その時に君の名前を聞いたんだ」
「えっ、凛花ちゃんと付き合ってたんですか!?」
木葉は驚き、思わず声を上げてしまった。
慌てて両手で口元を抑える。
凛花の彼氏の話は何度か聞いたことがあったが、実際に会うのは初めてだ。
思わずまじまじと見た木葉に、菅波は苦笑して続ける。
「一年もしないうちにぼくがフラれてしまったんだけどね。彼女は元気?」
「あ……はい、元気です」
「そう、それはよかった」
ははと菅波は爽やかに笑う。
笑うと眼鏡の奥の瞳が少し柔らかくなる。
「しかし、そうか……君がね。木葉ちゃんか……」