のたお印の短編集
…その夜のうちに、猛流は指令を実行に移した。

今は放置されてしまった、建設途中の工事現場に足を踏み入れる。

ここでかつて、凄惨な事件があった。

普通の大学生だった二十歳の上条 永久子が、男達に拉致監禁されて弄ばれた挙句、最期は殺害されて工事現場に遺体を埋められた。

美しいという事は、時としてただそれだけで死ぬ理由になる事がある。

嫉妬に晒され、或いは男達の欲望に晒されて。

父親とも不仲だった為、『異性に愛される』という経験をしなかった永久子は、結果男性全てを憎悪し、呪いながら、成仏する事なく今も現世を彷徨っている。

ここはそんな永久子の眠る地。

憎悪と怨念に彩られた、陰惨な地。

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