のたお印の短編集
カツ、と。

靴音を響かせて猛流は工事現場に足を踏み入れる。

振り向かぬまま、油断なく視線を走らせる猛流。

その視線の端に、何かが映った。

背後。

深夜の工事現場に、呆けたように立つ一人の若い女性。

その姿は凄絶だ。

美貌なのだが、煙草を押し付けられた痕、鋏で無造作に切られた黒髪、手首に残った縛られた痕、太股の血の流れた跡、殴られて腫れ上がった頬など、生前の壮絶な暴行の傷がそのまま残っており、見る者を戦慄させる外見。

彼女が件の上条 永久子。

この地に近づく者を次々と呪殺し、慈空の片目をも奪った悪霊である。

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