のたお印の短編集
「くぅっ…!」

刀の切っ先を地面に突き立て、それを支えに。

猛流は片膝をつく。

片手で胸を掻き毟る。

「ぬかった…!」

内に逃げ込んだ『それ』を確かに感じながら、猛流は歯噛みする。

刃に貫かれ消滅する直前、永久子は猛流の中に逃げ込んだ。

即ち憑依。

とり憑く事でその存在を維持し、悪霊の身のまま生き永らえようとしたのだ。

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